製品やそのパッケージに「特許取得 特許第0000000号」といった表示を見かけることがあります。
これは一般に「特許表示」と呼ばれます。
特許権者は、この特許表示をすることで、消費者に対し、自社しか実施できない独自の技術に基づいた製品であることをアピールすることができます。
また他社に対しては、その製品が特許の対象であることを明示することで、その製品の特許が侵害されるのを未然に防ぐことができます。
ところで、日本では、特許製品を販売するときに、その製品に特許表示をしなくても、法律上、不利な扱いを受けることはありません。
特許権者が、特許製品に特許表示をしていなかった場合でも、特許表示をしているときと全く同じように、侵害行為に対する損害賠償請求が認められます。
一方、アメリカでは、事情が異なります。
アメリカでは、特許権者が、特許製品に特許表示をしていなかった場合、侵害の通知がなされた後の侵害行為に対する損害賠償請求しか認められず、その通知よりも前の侵害行為に対する損害賠償請求は認められません(アメリカ特許法287条(a))。
つまり、アメリカでは、特許表示をしていなければ、過去の損害行為に対する損害賠償請求が制限されます。
そのため、アメリカでは、日本とは異なり、特許表示をしていたか否かで、損害賠償の金額が大きく異なってくる可能性があります。
ここで、アメリカの特許表示は、特許の権利範囲内に含まれるすべての製品に行なう必要がある点に注意が必要です。
すなわち、一部の製品に特許表示をしていたとしても、同じ特許の権利範囲内に含まれる他の製品に特許表示がなされていなかった場合、特許表示の規定を十分に遵守しているとは認められず、その特許の侵害行為に対する損害賠償請求が制限されるおそれがあります。
さらに、特許を第三者にライセンスしている場合は、自社製品だけでなく、ライセンス製品にも特許表示をする必要があります。
このように、アメリカの特許表示は、特許の権利範囲内に含まれるすべての製品に行なう必要があります。
また、多数の特許が、単一の製品に使用されている場合があります。
この場合、多数の特許番号を単一の製品に表示すると、その製品のデザインが損なわれるという問題があります。
また、新たな特許が成立したり、すでに成立した特許が消滅したりするごとに、特許番号の追加や削除をするために製品デザインの変更を行なうのは容易ではないという問題もあります。
このような問題に対応するため、アメリカでは「バーチャル特許表示」が認められています。
バーチャル特許表示は、特許製品に「patent」または「pat.」の文字とインターネットのURLとを表示し、そのURLのページに、特許製品と特許番号を結びつける情報を掲載するというものです(アメリカ特許法287条(a))。
バーチャル特許表示ですと、多数の特許が単一の製品に使用されている場合にも、製品のデザインを損なうことなく特許表示をすることができますし、インターネットの掲載情報を更新するだけで、製品デザインを変更することなく特許番号の追加や削除を行なうことができます。