鎌田特許事務所
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商標登録表示(Ⓡ)

投稿日: 2019年12月26日投稿者: 高橋一彰

以前に特許表示についてのお話がありましたが、今回は、商標登録表示についてのお話です。

日本での正式な商標登録表示は、「登録商標」の文字と登録番号を記載した「登録商標第〇〇〇〇〇号」としたものです(商標法施行規則第17条)。自らの商標であることを積極的に表明し、他人による商標権侵害を未然に予防するという効果が期待できるとして、登録商標を使用する際には、商標登録表示を付すことを努めることが求められています(商標法第73条)。

海外でも、このような商標登録表示は存在し、最も有名なのは米国の「Ⓡ(以下、「Rマーク」と言います。)」です。

Rマークは、米国では、連邦登録を受けていることを示す正式な商標登録表示であり、これを付さずに登録商標を使用していると、商標法上のメリットが享受できない場合があります。具体的には、商標権が侵害されても相手方の悪意が推定されず、登録商標であることを相手方が知っていたと商標権者が立証しなければいけません。そのため、米国では登録商標の使用の際は、Rマークを付すことが一般的です。また、中国でもRマークは正式な商標登録表示として規定されており、商標の右上又は右下と、付す位置まで細かく規定されています。

現在、日本では、商標登録表示としては、正式なものではなく、Rマークが使用されている場合が多いと思われます。では、日本で正式な商標登録表示でないRマークを使用することのリスクはないのでしょうか?商標法第74条にて、登録商標以外の商標の使用をする場合において、その商標への商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付す行為が禁止されています。これに違反すれば、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金が科される場合があります。Rマークは正式な商標登録表示ではありませんが、広く使用されている実情より、Rマークが付された商標は、登録商標と認識される可能性が高く、登録を受けていない商標へ付した場合は、虚偽表示の罪に問われるリスクがあります。また、登録商標であっても、その指定商品・役務以外の商品・役務へ使用するものまでにRマークを付せば、同様に虚偽表示の罪に問われるリスクがあります。

こうした、登録されていない商標へRマークを使用するのは、リスクを伴うものであることは、比較的容易に理解いただけると思われます。

しかし、「文字商標として商標登録を受けているが、それをロゴ化したものへもRマークを付けてよいか」等、登録商標とは態様が異なるが類似したり関連したりするものへRマークを使用することの可否について、お問い合わせ頂くことがよくあります。

上述の通り、商標法第74条にて、“登録商標以外”への登録商標表示と紛らわしい表示の使用は禁止されており、文言上、登録商標と同一のもの以外へRマークを付すことは、虚偽表示行為に該当することになります。また、商標権者が独占して使用できるのは登録商標のみであり、類似商標までも独占して使用できるわけではありませんので、やはり登録商標と同一のもの以外へのRマークの使用は、虚偽表示に該当するリスクがあります。そのため、登録商標と異なる態様のものへRマークを使用される場合は、再度商標登録していただくことが望ましいです。

しかしながら、商標を変更する度に改めて商標登録していては、権利範囲にたいした差異のない商標をいくつも保有することになる可能性があり、コスト面や管理面から現実的ではないようにも思われます。また、文字商標のみ登録され、ロゴ態様で使用する場合にもRマークが付されている例は多数見受けられますが、そうしたものが虚偽表示と判断されて摘発された例は、いまのところ確認されていません。よって、登録商標と異なる態様のものへRマークを使用される場合は、商標の類似範囲、生じるリスク、必要なコスト等を総合的に検討していただき、ケースバイケースで判断されるしかないように思われます。勿論、判断に迷われた場合等は、弊所までお気軽にお問い合わせください。

なお、次回は、商品を中国等の海外へ輸出する場合の、Rマークの使用に関する注意点等についてお話させて頂く予定です。